電気自動車(EV)充電による排出量を精緻に算定するサービスを提供
電気自動車(EV)充電による排出量を精緻に算定するサービスを提供
GHGガイダンス改訂を先取りし、政府実証事業で当社特許技術の有効性を検証
背景:EV充電による排出量算定の必要性
現行のGHGプロトコル・スコープ2ガイダンスの2.1項では、スコープ2の会計と報告のビジネス目標について、さらに概要を説明している。企業基準およびスコープ3基準との整合性から、電力を消費する企業は以下を目指すことができるとしている。
- 社内のGHG削減機会を特定し、削減目標を設定し、実績を追跡する。
- エネルギー供給業者およびパートナーをGHG管理に関与させる
- 透明性のある公開報告を通じて、ステークホルダーの情報と企業の評判を高める。
調査サマリーによれば、EVの導入においては、よりきめ細かな排出量の「算定」を行うことで、企業や家庭のよりきめ細かな排出「削減」を促し、その効果を客観的に測定することが求められている。また、電力供給者や充電サービスに関わる事業者は、その的確な管理を支援することが求められる可能性がある。
このような記述を鑑みれば、規制当局は、今般の改訂がなされた場合、将来的には、EV充電の排出削減効果やその努力を客観的な指標で評価すととともに、電力供給者がその管理や支援をどのように行っているかを、やはり客観的な指標で評価し、比較することが求められる可能性がある。
事実、調査サマリーにおいては、「ガイダンスの目的に関するフィードバック」として以下が言及されている。
- 報告主体のバリューチェーンからの排出量を正確に反映したものでなければならない。
- エネルギーの物理的消費と、そのエネルギーを生み出すための操業に伴う排出を反映すること。
- 正確な会計と報告を通じて脱炭素化を促進する。
- 質の高い排出削減と除去のための行動と戦略を優先し、推進する。
- 報告組織間の比較可能性
そこで、電力シェアリングでは、一般負荷に適用される手法を応用して、その排出削減努力と効果を客観的に測定し、比較し、取引する技術を開発し、特許を取得している。その概要を以下に示す。
なお、電力シェアリングでは、令和4年度から環境省実証事業として当該特許技術の有効性を検証した。家庭用については、GHG Protocol Scope 2 ガイダンスの改訂による日本国内の制度改定が堅実の者となり次第商用化する。
また、この日本発の技術広く世界に発信することを目的として、先進的な取り組みに賛同する需要家・電力小売会社・炭素会計管理サービス会社等にライセンス供与を行っている。
客観的指標の開発
電力シェアリングでは、排出削減努力と効果を測定し、比較する客観的指標として、期間・加重平均炭素原単位(kG-CO2/kWh)の算出と、企業や家庭の炭素効率性や、排出削減効果を絶対・相対評価し、その環境価値を取引することで、金銭的・非金銭的インセンティブを付与し、企業や家庭の行動変容を促す手法を実用化している。
既に産業用需要家や電力供給事業者・炭素会計サービサーを対象とした商用化を果たすとともに、環境省ナッジ実証事業として、一般家庭(EVユーザーやプロシューマを含む)向けの行動変容に向けた大規模社会実証実験を行っており、その事業モデルの有効性が確認されれば、家庭向けサービスの商用化も行う計画である。
客観的指標の概要
EVのCO2排出量(kg-CO2/km)(発電による)率は、EVの充電時間によって異なる。EV充電によるCO2排出量を、各需要家の電力消費量(kWh)と期間・加重平均炭素原単位(kG-CO2/kWh)に因数分解して、期間・加重平均EV充電CO2排出係数(kG-CO2/kWh)を抽出する。
これにより、各EVの充電によるCO2排出削減行動を、電力消費量(kWh)の削減と、期間・加重平均CO2排出係数(kG-CO2/kWh)の削減に分けて管理・評価・取引することが可能となり、その成果の可視化により、より具体的な行動変容を促すことが可能となる。
期間・加重平均需要家CO2排出係数(kG-CO2/kWh)の削減は、送配電網時間帯別CO2排出係数(kG-CO2/kWh)の低い、すなわち概ね再エネ比率の高い時間帯への消費のタイムシフトによって実現する。
昼夜間で異なるEVのガソリン車に対する排出量の優位性
これを自家用車1km走行に伴うCO2排出量の比較でみると以下のようになる。
交通セクター脱炭素化のロードマップ
さらに、上記を含めて交通セクターにおけるCO2排出削減策を展望すれば、以下の各段階において企業・消費者(マイカー利用者)の行動変容を促すべきである。
- 目的地をなるべく近くにする。
- 列車・バスなどの公共交通機関を利用する。
- 車を利用する場合はなるべくシェアライドする。
- なるべくCO2排出量が少ない車を選ぶ。
- EVを利用する際はなるべく送配電網の炭素強度が低いときを選び充電する(昼充電のすすめ)。
- 最終的には「生」再エネ電気で充電し、ゼロカーボンドライブを実現する。
昼充電タイムシフトの3類型
EV充電の再エネ比率の高い時間へのシフト(昼充電)の手法として、当社では、
①自律手動、
➁自律自動、
③他律自動
の3段階に分類して、それぞれの行動変容モデルを構築している。
このうち自律自動(①)は、EV利用者が、EV充電時間お日さまが照っている時間にずらす行為である。また、自律自動(➁)は、例えば、タイマーをセットして、EV充電時間をずらす行為である。昨今一部のEVメーカーは、タイマー充電アプリを提供し、その利用者も多い。さらに、他律自動(③)は、例えば、外部のアグリゲーターがVPPの一環として、電力余剰時には(上げDR)として、遠隔・リアルタイム。自動でEVを充電する行為である。
期間・加重平均EV充電CO2排出係数(kG-CO2/kWh)でのEV充電者の脱炭素行動の管理は、これらの組合せで、負荷の平準化と再エネ供給追従を効果的に促進するための、効果的なツールとなり得る。
日本発の新技術として世界に発信
電力シェアリングでは、この手法を積極的に海外に発信し、国際的な展開を図っている。国連24/7 CFE Compactは、その活動の5原則の1つとして、「テクノロジー・インクルーシブ:ゼロ・カーボン電力システムをできるだけ早く構築する必要性を認識する。すべてのカーボン・フリー・エネルギー技術は、この未来を創造する役割を果たすことができる。」としており、国連24/7 CFE Compactはニュースレターで当社の同技術を好事例として紹介し、Energy Tagもケーススタディとして取り上げている。
EV充電とグリッド・インテグレーションは、追加ガイダンス、新技術および使用例に関するフィードバックの説明会で用いられた以下の資料のなかで、求められる技術の具体例の1つに挙げられている。
電力シェアリングの特許技術は、まさにそれらを先取りしたものだと自負している。
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