アワリーマッチングが電力ビジネス5Dを実現するドライバーとなる可能性
アワリーマッチングが電力ビジネス5Dを実現するドライバーとなる可能性
企業GHGプロトコル改訂の衝撃
~環境ビジネスのグレートリセットへ万全の準備と対応を
GHG Protocol Scope 2 ガイダンスの改訂作業での大きな論点がマーケット基準でのアワリーマッチングの導入やロケーション基準での時間性・近接性・追加性の要件追加です。
これらが採用されるか、あるいは採用されたとしても、どの程度厳格に適用されるかは、まだ予断を許しませんが、その行く末如何では、長期的に電力取引やその周辺事業に大きなインパクトを与えていくと当研究所では予測しています。
5つのDの現実味
2018年前後に、電力にかかわる新規事業やスタートアップブームが到来して、その変革をもたらすドライバーとして「5つのD」が大きく取り上げられるようになりました。
5つのDを、デジタル化(Digitalization)、脱炭素化(De-carbonaization)、自由(Deregulation)、分散化(De-centlization)、人口減少(Depopulation)と整理されている向きもあります。
一時の熱狂的ブームが去った今でもその流れは深く・静かに進行し、GHG Protocol Scope 2 ガイダンスの改訂が起爆剤として現実化するという見方も成り立つかもしれません。
電力ビジネスの近未来像
従って、発電・送電・小売や取引に関わる既存事業者のみならず、これから参画するスタートアップ企業にとっても、ロケーション基準・マーケット基準の精緻化という大きなトレンドを注視することは重要であると考えます。
実際、電力事業を取り巻く情勢は、証券化・市場化・金融化・外資化・プラットフォーム化・中抜き化・付加価値化など多くのキーワードで語られていますが、こうした動きとGHG Protocol Scope 2 ガイダンスの改訂は大きく関わっているとも言えるでしょう。
その根底にあるのは、「新基準に合致する質の高い再エネ電力を調達し、これを顧客に適正価格で提供するか」です。とはいっても、GHG Protocol Scope 2 ガイダンスの改訂が実際になされるのは2025年前後であり、さらにそれが猶予期間を経て、各国の法規制や運用に組み込まれるのは早くても3年後です。
今後の対応
世界に目を転じれば、これを商機と見たGoogleやMicrosoftなどのビッグテック企業が制度改革を待たずに、先手を打ってボランティアベースで積極的に活動を進めています。
再エネを取り巻く情勢や、世界における市場設計や法規制は数年ごとに大きくアップデートされています。こうした世界の動きを睨みながら、事業モデルのアップデートを常に指向していくというアプローチが有効です。
当研究所では、GHG Protocol Scope 2 ガイダンス改訂に関わる欧米を中心とする関係各機関と緊密に連携を取り、その国際標準化策定に積極的に参画しており、日々最新の情勢を収集しています。
また、その知見をベースに、日本の各市場や企業活動への影響を分析し、各企業・団体にアドバイザリーサービスを提供しています。また、独自の特許技術や、政府実証事業で培ったその応用的知見を基にした各種ソリューションを、電力関連事業者の皆様や炭素会計サービサーの皆様にライセンス供与しております。
さらに、地方自治体や政府・公的機関には無償での提供も行っています(ただし条件があります)。是非お気軽にお問い合わせください。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
も大きく改正CO2排出に関わる全ての制度や事業構造が大きく変革される可能性が高いのも
を定めるScope 1・2・3の既存3文書全ての抜本的な改訂作業が進められている。は、世界環境経済人協議会(World Business Council for Sustainable Development: WBCSD)と世界資源研究所(WorldResource Institute: WRI)により1998年に共同で設立され、温室効果ガス排出量の算定・報告をする際に用いられる各種基準(コーポレート基準、スコープ3基準、スコープ2ガイダンス等)を発出している。
この基準は、グローバル企業の気候変動対策に関する情報開示・評価の国際的なイニシアティブ(CDP、RE100、SBT 等)に用いられていることから、国際的なデファクトスタンダードとおり、企業活動報告、政府・地方自治体の排出量統計や、再エネ証書制度証書設計の基盤となっている。
現在、電力の脱炭素化を進める上で様々な課題が顕在化してきていることを背景として、GHGプロトコルの枠組みを定めるScope 1・2・3の既存3文書全ての抜本的な改訂作業が進められている。
その改訂は、企業や政府・地方自治体の報告にとどまらず、わが国における再エネ評価の枠組みに大きな影響を与えることが予想され、カーボンクレジット取引や再エネ発電・蓄電池投資、ひいては電力システムの在り様も変えてしまいかねない。
従って、GHG Protocol改訂の背景や内容を分析し、わが国の再エネ評価やカーボンクレジット取引・電力システムへの影響を評価し、そこに必要な技術や事業機会を展望することが喫緊の課題である。
そこで株式会社電力シェアリングでは、再エネアワリーマッチング研究所(RE Hourly Matching Institute)を設立し、これに関連する国連・欧米諸機関の議論に積極的に参画することで、一次情報に基づく様々な分析を行い、政府機関・自治体・企業(電力会社・炭素会計サービサー等を含め)に向けた情報発信や個別のアドバイザリーサービスを本格的に開始することとした。
日本経済・社会へのインパクト
GHGプロトコルScope2ガイダンス改訂の重要な柱は、①Hourly Matching手法の導入、➁追加性の担保、③証書の取り扱いの見直しである。
折しも、2024年1月に欧州連合(EU)議会を通過したいわゆるグリーンウオッシュを禁じるグリーンクレイム指令では、オフセット証書による商品・サービスの脱炭素主張が禁止された。今のところ電力オフセットへの言及はないが、「「温室効果ガス・オフセットを透明性のある方法で報告する:オフセットが温室効果ガスの排出「削減」なのか「除去」なのかを峻別して明示し、オフセットの質に関する情報を提供する」」としており、GHG Protocol Scope 2 ガイダンス改訂のねらいと一致する部分がある。
また、EUでは、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける新たな仕組みである国境炭素調整措置(CBAM)の導入も準備されている。
これらを勘案すれば、近未来において、あくまでも様々な仮定がシンクロナイズされて現実のものになった時の話ではあるが、GHGプロトコルScope 2ガイダンスに、再エネ取引でのHourly Matching手法が盛り込まれ、日本国内の諸制度がその基準に満たないと判断された場合、日本基準での再エネ電力を用いて生産された自動車や鉄鋼・食品などの製品が、欧州基準を満たさないグリーンウオッシュ品とみなされ、欧州への輸出を制限される可能性もあり得ると思料する。
また、GHG Protocol Scope 2 ガイダンス改訂の議論を主導する主体にも目を向ける必要がある。それは、当然のことながら、従来から環境分野で主体的な枠割を担ってきたCDP(Carbon Disclosure Projectは英国の非政府組織(NGO)であり、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを提供する)やI-RECなどの諸機関であるが、加えて、GoogleやMicrosoftなどのGAFAMの一角や、ブロックチェーン技術などを有する気候変動テックのPowerledger社などのDX技術を有する企業等も参画している。
安全保障の視点も含めて、日本の産官学もこの動きを注視しながら、積極的に基準作りやその適用に参画すべきであると考える。
当研究所は、一般にこの国外での動きに積極的に参画し、欧米の主要ステークホルダーとの緊密な関係を構築し、情報収集・分析を行い、それらの情報を当該ウエブサイトやウエビナー等で積極的に公開・発信している。
また、国内各企業・シンクタンク・環境報告や炭素会計サービスを手掛ける事業者や行政機関への個別のアドバイザリーサービスを提供しているところである。
(参考)GHGプロトコルについて
目的:オープンで包括的なプロセスを通じて、国際的に認められたGHG排出量の算定と報告の基準を開発し、その利用を促進することである。事業者、NGO、政府機関を含む様々な利害関係者が、算定及び報告の理論に裏打ちされた信頼性のあるGHGの評価方法の開発、全世界規模での運用からの情報の説明と報告、GHG排出量の管理及び削減のための効果的な戦略の構築、他の気候イニシアチブや報告基準を補完するGHGに関する情報の提供を支援することを目的としている。
運営者:1998年に世界環境経済人協議会(World Business Council for Sustainable Development: WBCSD)と世界資源研究所(WorldResource Institute: WRI)により共同で設立された。事業者、NGO、政府機関など多岐にわたる利害関係者の協力により作成され、GHG排出量の算定と報告に関する貴重な知識源として提供されている。
概要:GHGプロトコルは事業者の排出量の算定及び報告の基準を提供し、GHGプロトコルのウェブサイトで利用可能な多数のGHG計算ツールによって補完されている。これらの基準、ガイダンス、及びツールは、事業者や他の組織がGHGインベントリを開発し、GHGの影響を明確にし、GHG排出量の管理及び削減のための戦略を構築するのを助けている。