電力発電・流通・小売事業の大転換
電力発電・流通・小売事業の大転換
企業GHGプロトコル改訂の衝撃
~環境ビジネスのグレートリセットへ万全の準備と対応を
GHG Protocol Scope 2 ガイダンスの改訂作業が進められています。既に論点整理がなされて、2024年中に改訂案が示され、2025年に最終化される予定です。
改訂の内実が日本の法制度や、電力や再エネ証書の仕組みに反映されるとしても、早くても数年はかかるでしょうからその意味では喫緊の課題ではありません。
一方で、GoogleやMicrosoftなどGAFAや米国政府、欧州各機関は制度改定を待たずにボランタリーベースで、その内容を先取りしてルールを設定し、日本での自らの事業活動や、取引先にその基準に該当する再エネ電力の調達を要求することも考えられます。
その意味では、しばらくは国内制度と新基準が併存する事態も考えられ、再エネ電力や再エネ証書を創出・仲介・販売する事業者は、その対応が求められる可能性もあると考えられます。
例えば、ロケーション基準では、時間性や地理近接性などのアワリーマッチングや、運転開始時期が浅い発電設備のみを認めるなどの追加性の担保が要求されたり、マーケット基準では、RE100基準としてCDPが容認しているJクレジット(オフセットクレジット)を用いて実質再エネ電力とみなす手法が認められなくなったり、非化石証書(再エネ証書)にしてもアンバンドル証書としての運用が認められなくなるなどの可能性があり得ます。
一方で、あまりに厳格に運用すると、特に新興国ではその対応が困難となることなどから、柔軟性とのバランスを求める声も多く聞かれます。
電力シェアリング・アワリーマッチング研究所では、導入に積極的な国連24/7Cや欧州非営利機関であるEnergyTag、そのメンバーであるGoogle・Microsoft事業の実行者等と緊密に交流しながら、その行く末を見極めながら、新基準にも適合する会計・取引手法を開発しています。
当社独自の特許で、EnergyTagの提唱する国際標準に適合するアワリーマッチング取引や時間帯別排出係数の算出に関する4の特許を取得し(追加して1特許を出願し、米国・EU・中国での審査請求を準備中)、環境省ナッジ実証事業でその商用可能性を実証し、EnergyTagに認められ、日本発の事業として、欧米で実証中のGoogle・Microsoft事業等と並列で紹介いただいています。
こうしたリアルタイムで蓄積する知見を基に、日本の現在の証書制度をそのままの形で日本法制度に適用しつつ、これを用いて国際標準にも対応可能とするハイブリッドでのソリューションの提供を法人向けに開始しています。
また、こうした情報のアップデートや、発電・流通・小売事業へのインパクト調査、当社技術を用いたサービス開発や実顧客へのデモ実証などにも対応させていただきます。
とりわけ、頻発する太陽光発電の出力制御に対処するため、電力会社や炭素会計サービサー向けに環境省実証事業の期間中は、送配電網時間帯別係数の無償ライセンス供与をさせていただいています。ただし無料ライセンス供与には一定の条件があります。また許可のない当社特許技術の利用は禁止します。
どうぞお気軽にお問い合わせください。
も大きく改正CO2排出に関わる全ての制度や事業構造が大きく変革される可能性が高いのも
を定めるScope 1・2・3の既存3文書全ての抜本的な改訂作業が進められている。は、世界環境経済人協議会(World Business Council for Sustainable Development: WBCSD)と世界資源研究所(WorldResource Institute: WRI)により1998年に共同で設立され、温室効果ガス排出量の算定・報告をする際に用いられる各種基準(コーポレート基準、スコープ3基準、スコープ2ガイダンス等)を発出している。
この基準は、グローバル企業の気候変動対策に関する情報開示・評価の国際的なイニシアティブ(CDP、RE100、SBT 等)に用いられていることから、国際的なデファクトスタンダードとおり、企業活動報告、政府・地方自治体の排出量統計や、再エネ証書制度証書設計の基盤となっている。
現在、電力の脱炭素化を進める上で様々な課題が顕在化してきていることを背景として、GHGプロトコルの枠組みを定めるScope 1・2・3の既存3文書全ての抜本的な改訂作業が進められている。
その改訂は、企業や政府・地方自治体の報告にとどまらず、わが国における再エネ評価の枠組みに大きな影響を与えることが予想され、カーボンクレジット取引や再エネ発電・蓄電池投資、ひいては電力システムの在り様も変えてしまいかねない。
従って、GHG Protocol改訂の背景や内容を分析し、わが国の再エネ評価やカーボンクレジット取引・電力システムへの影響を評価し、そこに必要な技術や事業機会を展望することが喫緊の課題である。
そこで株式会社電力シェアリングでは、再エネアワリーマッチング研究所(RE Hourly Matching Institute)を設立し、これに関連する国連・欧米諸機関の議論に積極的に参画することで、一次情報に基づく様々な分析を行い、政府機関・自治体・企業(電力会社・炭素会計サービサー等を含め)に向けた情報発信や個別のアドバイザリーサービスを本格的に開始することとした。
日本経済・社会へのインパクト
GHGプロトコルScope2ガイダンス改訂の重要な柱は、①Hourly Matching手法の導入、➁追加性の担保、③証書の取り扱いの見直しである。
折しも、2024年1月に欧州連合(EU)議会を通過したいわゆるグリーンウオッシュを禁じるグリーンクレイム指令では、オフセット証書による商品・サービスの脱炭素主張が禁止された。今のところ電力オフセットへの言及はないが、「「温室効果ガス・オフセットを透明性のある方法で報告する:オフセットが温室効果ガスの排出「削減」なのか「除去」なのかを峻別して明示し、オフセットの質に関する情報を提供する」」としており、GHG Protocol Scope 2 ガイダンス改訂のねらいと一致する部分がある。
また、EUでは、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかける新たな仕組みである国境炭素調整措置(CBAM)の導入も準備されている。
これらを勘案すれば、近未来において、あくまでも様々な仮定がシンクロナイズされて現実のものになった時の話ではあるが、GHGプロトコルScope 2ガイダンスに、再エネ取引でのHourly Matching手法が盛り込まれ、日本国内の諸制度がその基準に満たないと判断された場合、日本基準での再エネ電力を用いて生産された自動車や鉄鋼・食品などの製品が、欧州基準を満たさないグリーンウオッシュ品とみなされ、欧州への輸出を制限される可能性もあり得ると思料する。
また、GHG Protocol Scope 2 ガイダンス改訂の議論を主導する主体にも目を向ける必要がある。それは、当然のことながら、従来から環境分野で主体的な枠割を担ってきたCDP(Carbon Disclosure Projectは英国の非政府組織(NGO)であり、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを提供する)やI-RECなどの諸機関であるが、加えて、GoogleやMicrosoftなどのGAFAMの一角や、ブロックチェーン技術などを有する気候変動テックのPowerledger社などのDX技術を有する企業等も参画している。
安全保障の視点も含めて、日本の産官学もこの動きを注視しながら、積極的に基準作りやその適用に参画すべきであると考える。
当研究所は、一般にこの国外での動きに積極的に参画し、欧米の主要ステークホルダーとの緊密な関係を構築し、情報収集・分析を行い、それらの情報を当該ウエブサイトやウエビナー等で積極的に公開・発信している。
また、国内各企業・シンクタンク・環境報告や炭素会計サービスを手掛ける事業者や行政機関への個別のアドバイザリーサービスを提供しているところである。
(参考)GHGプロトコルについて
目的:オープンで包括的なプロセスを通じて、国際的に認められたGHG排出量の算定と報告の基準を開発し、その利用を促進することである。事業者、NGO、政府機関を含む様々な利害関係者が、算定及び報告の理論に裏打ちされた信頼性のあるGHGの評価方法の開発、全世界規模での運用からの情報の説明と報告、GHG排出量の管理及び削減のための効果的な戦略の構築、他の気候イニシアチブや報告基準を補完するGHGに関する情報の提供を支援することを目的としている。
運営者:1998年に世界環境経済人協議会(World Business Council for Sustainable Development: WBCSD)と世界資源研究所(WorldResource Institute: WRI)により共同で設立された。事業者、NGO、政府機関など多岐にわたる利害関係者の協力により作成され、GHG排出量の算定と報告に関する貴重な知識源として提供されている。
概要:GHGプロトコルは事業者の排出量の算定及び報告の基準を提供し、GHGプロトコルのウェブサイトで利用可能な多数のGHG計算ツールによって補完されている。これらの基準、ガイダンス、及びツールは、事業者や他の組織がGHGインベントリを開発し、GHGの影響を明確にし、GHG排出量の管理及び削減のための戦略を構築するのを助けている。